2019-01-01から1年間の記事一覧

旅12

「それ、なんの楽器ですか?」 チェロです、いえ、地元民ではなくて、東京から遊びに来ていて…。 おばさまは、「友人がファゴットをやっていて、先日コンサートに行ったのよ、オーケストラなんですけどね…。」「江坂公園は春の桜も綺麗よ、みんなであそこの…

救済の烏滸がましさ

今年のうちに、私のなかの「なにか」は、きちんと回復するのだろうか。 ここ1〜2年で、ようやく、自分の手と足を自覚できたような気がしている。なにを掴み、どこに立ち、どこへ歩いていけるのか。 それでも、空虚なきもちは常に追いかけてくる。そういう病…

そういう日のこと

永遠に程よい空調。 カーテンの隙間から洩れる光。 ふいに暗くなり大雨の音に包まれる。 季節を失った心の、静かな静かな波。 やさしい尻尾が頬をなでる。 気がつくと、夢の底でみんな微笑んでいる。 天国に時間はないのに、悲しくなるのはいつだって明け方…

旅11 (2018/06/12 noteより)

5月22日 火曜日、目が覚めると真っ暗だったので、夜明け前かと思い時計を見たら、朝の9時半を過ぎていた。窓が遮光性に優れすぎている。 前の日に、電車の中で目星をつけていた江坂公園に行って、チェロを弾くことにする。 淀川に出ることも考えたのだが、日…

旅10 (2018/06/11 noteより)

新大阪に着くと、人がどっと降りた。サラリーマン、OL、学生。当たり前といえば当たり前だが、みんな関西弁だ。 そしてみんな、エスカレーターの右側に並ぶ。おお、関西に来た。だらだらと電車に乗っているだけで関西に来た。すごい。 あとで気が付いたが、…

旅9 (2018/06/11 noteより)

5月21日 月曜日、朝8時過ぎ、家を出る。 これから約10時間、普通列車と快速を乗り継いで、新大阪までいくわけだが、もうすでに後悔する。 平日の朝8時なんて、満員電車に決まっているのだ。山手線はぎゅうぎゅう。そこに楽器と大きめのバッグを持った人が乗…

旅8 (2018/06/10 noteより)

20日、日曜日の朝、青森はようやく晴れた。起きたら、叔母はもう仕事に行っていた。 出発は昼過ぎとはいえ、早めに荷物をまとめておく。冷凍の水草ガレイが、あまりにもたくさんあるので、東京の家に送ろうと思ったのだが、日曜日なので近所の運送業者が開い…

旅7 (2018/06/10 noteより)

帰宅して、ごはんを食べ、少し離れたコンビニへ向かった。父のとった写真を、現像して、帰ってくる。 祖母に渡したら、にこにこと眺めていた。 みんなで映画をみる。父が、新しく買った中古ノートパソコンで、Blu-rayをみてみたくて仕方がなくて、わざわざノ…

旅6 (2018/06/09 noteより)

その日の夜、叔母がきた。父の妹だ。 みんなでご飯を食べて、父と叔母は軽く、祖母のことについて話し始めた。 週一でもヘルパーさんに来てもらおうか、光熱費の振り込みを全て引き落としにしようか、など。 私は別室に行き、チェロを弾いたり仕事の連絡をし…

旅5 (2018/06/09 noteより)

翌朝、大雨の予報だったが、まだ晴れていた。 父が、晴れてるうちに、少し外に行ってみる? と言うので、一緒に車に乗った。祖母は来なかった。 車で10分ほどの海岸に行ってみる。特になにもないが、大きな岩棚が広く広く、続いている。千畳敷の名前の通りだ…

旅4 (2018/06/09 noteより)

仏壇にお土産をあげて、手を合わせる。 翌日から二日間、大雨の予報だったので、雨に合わせて来たようなもんだね、とみんなで笑いあった。 青森の最高気温は、12℃。 祖母は、時折ストーブをつけて、テレビを見ている。 普段は、もう立ち上がるのも億劫だ、食…

旅3 (2018/06/09 noteより)

5月15日の昼すぎ、父から連絡が入った。出発を一日遅らせてもいいか、とのこと。仕事が入ってしまったらしい。もちろん、と返して、まだしていなかった荷造りをした。 その日の夜に、実家に泊まり、16日の早朝に出発する予定だったので、予定がまるっと一日…

旅2 (2018/06/09 noteより)

「16日から20日で、行ける?」と電話がきた。4泊5日、想定よりは長かったが、行けると答えた。 父から連絡が来るまでに、交通手段だけは算段していた。 チェロと一緒ということを考えると、高速バスには無理がある。そもそも楽器を持ち込めないバス会社が多…

旅1 (2018/06/08 noteより)

2018年5月、どこかに旅行に行こうかなと、思い立つ。正確には、旅行してみれば?と言われ、それも良いなと思ったのだ。 ぽっかりと空いたスケジュール。金銭的に切迫しているわけでもない。こんな機会はなかなか無いかもしれないと、重い腰をあげてみた。 最…