旅8 (2018/06/10 noteより)
20日、日曜日の朝、青森はようやく晴れた。
起きたら、叔母はもう仕事に行っていた。
出発は昼過ぎとはいえ、早めに荷物をまとめておく。
冷凍の水草ガレイが、あまりにもたくさんあるので、東京の家に送ろうと思ったのだが、日曜日なので近所の運送業者が開いていない。
日曜日でもクール便を受け付けてくれるところを探す。なんとか、通り道で発送できそうなところを見つけた。
祖母に数曲聴かせる。
祖母は「バイオリンだのチェロだの、なんだか面倒臭いものだね」「チェロのほうが大きいから、詩織ちゃんのほうが(姉と比べて)大変だ」「でも、テレビで流れていると、たまに聴いたりするんだよ、嫌いではないんだ」などと言っていたが、一曲だけ「それはなんて言う曲?」と興味をもった。
「白鳥っていう曲だよ」
「静かでいい曲だねぇ。白鳥は、飛んでいるのかな、泳いでいるのかな…」
白鳥は湖ですいっと泳いでいる姿のほうが、美しいように思う。私が曲にするなら、泳ぐ姿だ。鶴だったら、翔ぶ姿も綺麗だろう。
祖母はしきりに、静かでいい曲だ、と言っていた。
お昼も過ぎて、父に荷造りするよう、軽く急かす。
荷物もまとまったので、じゃあ、帰りましょう、となる。
祖母が、あと何回くらい会えるかねぇ、と言うので、20回くらいだよ、と答えると、笑っていた。8月くらいに、またすぐ来るからね。
しばらく玄関に立って、見送ってくれた。
父は、とてもとても心配していた。こんなに、置いて帰ることに罪悪感を持ったことはない、と言いながら、運転する。
荷物も無事に発送できたので、駅近くのお店で、早めのお夕飯を食べる。レンタカーも返し、新幹線の時間を待つ。
東京駅に着いたのは、夜の8時半ごろだった。
父が「実家に来る?」と聞いてきたが、いや、今日は家に帰るよ、と答える。
父には一言もいっていないが、明日の朝からまた一週間、東京にはいないのだ。
つづく