旅12
「それ、なんの楽器ですか?」
チェロです、いえ、地元民ではなくて、東京から遊びに来ていて…。
おばさまは、「友人がファゴットをやっていて、先日コンサートに行ったのよ、オーケストラなんですけどね…。」「江坂公園は春の桜も綺麗よ、みんなであそこのふちにまーるく座ってね、お花見しながらごはん食べて…。」「太陽の塔もわりと近いのよ、電車で20〜30分くらいかしら、モノレールに乗り換えて…。」などと、食べ終わったお弁当箱をハンカチで包みながら、朗らかにお話ししてくださった。
もうすぐお昼休みが終わっちゃうので、私はこれで、と立ち上がったおばさま。立ち去りかたも爽やかだった。
さて、 弾くかと思うと、空いたベンチにまた違うおばさまが座った。お弁当の包みを広げて、黙々と食べている。きっとここは、人気のお弁当スポットなのだ。
そこへ、違うおばさまが来た。そのおばさまも、お弁当を広げて食べている。
おばさまとおばさまは、知り合いではなさそうだったが、普通に会話している。
みんなベンチに座りたいだろうし、あまり邪魔しないように、大人しく弾かずに帰ろうかなと思っていると、おばさまがたが話しかけてくださった。
「それ、楽器でしょう? なんの楽器?」
「チェロやんね?」
さすがである。大阪。みんな話しかけてくる。
私が関西人でないのを見越してか、コテコテの関西弁ではない。(しかしイントネーションは関西)
「聞いてみたいわぁ」
「ねぇ、もし良ければなにか弾いて」
せっかくなので、こちらもお言葉に甘えて、楽器ケースをあける。
つづく