旅4 (2018/06/09 noteより)

仏壇にお土産をあげて、手を合わせる。

翌日から二日間、大雨の予報だったので、雨に合わせて来たようなもんだね、とみんなで笑いあった。

 

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青森の最高気温は、12℃。

祖母は、時折ストーブをつけて、テレビを見ている。

普段は、もう立ち上がるのも億劫だ、食べるのも億劫だ、と言っているらしい祖母も、ごはんの準備を軽く手伝い、たくさん食べている。
やはり、ひとりで居るとなんでも億劫になる。

 

本当は、祖母も東京に来ればいいのだ。

祖母は、今さら引越したくないし、青森でひとりで良いよと言ってはいるが、来てしまえば楽しく暮らせる人だ。元来、柔軟性に富んだ、モダンなおばあちゃんだ。

 

でも、父は怖いのだ。

逆に、青森に戻ろうかな、などと言っている。それも良いと思う。でも、多分、父はしない。

母も、青森の人である。でも、母は絶対に青森には戻らない。

本当は、バイオリンやピアノをいちばん習いたかったのは、幼少期の母だ。でも、土地も周りの人間も、そういう環境ではなかった。

母は、東京が好きだ。
祖母が東京にきたら、たまに一緒にデパートに行ったり、ちょっと美味しいもの食べに行ったり、きっとお義母さんも楽しいのにね、と言っている。

 

私はぼんやりと、私が、青森で祖母と住むという選択肢もあるんだな、と思った。

 

祖母はテレビを眺めて、この監督は悪い監督か? 悪い顔をしている、と聞いてくる。アメフトの悪質タックルのニュースばかりが流れている。

この監督は、悪い顔をしているけど、悪くない監督だよ。こっちの監督が、優しい顔をしているけど、悪い監督。

 

祖母は、顔と逆だったなぁ、と笑っている。

 

つづく