過去短歌

Twitterに載せた過去の短歌拾い出しです。

校正なし、メモ代わり。新しいものより。

 

2021.6.9. 

手に持ったスーツに揺れる木漏れ日と 戯れはねる寝癖のステップ

 

2021.5.27.
鼻歌でしか知らぬ歌ラジオから流れた君の好きなあのサビ

 

砂となり落ちた私の過去たちは どこかのビンで聳え立つ山

 

立葵 そっと揺らしたスカートのフリル 夏なら昨日みかけた

 

人類は生き延びる術みつからず 死ぬ術もない今日は満月

 

遠い国ではないあなたの住む街に 行く日は来ない理由は知らない

 

切りたての髪さらさらと頬をなで 知らない道で帰ってみた日

 

マスクして隠してしまう色であれ ていねいに引く口紅の端

 

赦さないわけない鍵はとうに失く 開け方もない古い抽斗

 

ハチドリの夢をみた夜 悠久の時に私はまばたきをする

 

2021.5.23.
文字を読み また文字を読み 進まない本の続きは眠りの向こう

 

砂糖漬けされたつもりの紫陽花の きらきらと蜜ためたまばたき

 

八分目の生地もこもこと山になり 冷ますマフィンの心穏やか

 

2021.5.18.
もどり道 ハイビームから目を逸らし消える鼻歌 雨まとう服

 

お利口にならんだ餃子 熱々の湯気にがし夜流すビールは

 

小さき歩幅の我 ふと目にうつる花屋の芍薬 堂々たる

 

2021.5.16.
ベランダの月 雲隠れ 2本目のアイス 明日は少し涼しい

 

口閉じてまあるく黙る紫陽花の 葉はいきいきと風を見ている

 

暗闇のすみに悲哀は固まって 集めて出せば不燃は火曜

 

2021.5.11.
初夏の日のグラス なかみは無かったが ただ反射するあなたは綺麗

 

チョコレートタルト好きではないけれど 漆黒の艶 今だけは好き

 

子ら駆ける道 さかのぼる通勤の かかとを減らす革靴の列

 

藤色の雲たなびいて夕焼けの 橋を渡ればどこかの夕餉

 

2021.5.9.
首すじに缶ビール当て溶けるよに 笑う横にはばらの花びら

 

2021.5.5.
曖昧な歌詞めちゃくちゃな順番で口ずさみ行くきみの待つ駅

 

ねじまきを巻いて鳴りだすオルゴール 感情のなき歌かなしげに

 

コーヒーの香り満ちたる我が部屋は 邪を追いはらう朝のまじない

 

ベランダのふち光らせて戯れる 朝陽の軽さ6ミリグラム

 

鳥たちの声で知りつつ朝はまだ私を知らずともぐる淡夢

 

会えたなら美味しい店に行こうねと 約束のまま峯雲は白

 

2021.5.4.
失ったショートケーキの苺から 香りたつ赤 また夜があける

 

寄る辺なき海つかさどる星座とて かそけく浮かぶ白ばらを乞う

 

花飾るビンの欲しさにのむ酒は ただひたひたに夜をふやかす

 

2021.4.29.
透明の水をたたえし浴槽に映るひかりはまだ夏を見ず

 

六肢を投げ 深呼吸するように羽はたはたとまだ飛べるやもせず

 

ことば なる 蝉の抜け殻のごと ただ脱ぐための外見をまとう

 

蟻地獄 蟻を与えぬ我の手で 乾いた死にも記憶はあるか

 

絡まったイヤホン越しの声にただ うなづくことは愛することと

 

部屋に咲く紫菫の絵はがきの 香りよ届け吾(あ)を慰めたよに

 

2021.4.18.
舟を漕ぐ また舟を漕ぐ 何度でも 風をくすぐる声おいかけて

 

2021.4.16.
しんとした夜22時 犬たちは 煌る目でなに見て春を嗅ぐ

 

2021.4.11.
ぞんざいなトイレ スリッパあたたかく ただただ容赦なく朝陽降る

 

2021.4.5.
なでてくれ 滑らかな背を丸くして 尾の端からは春の喜び

 

ささやかな音さらさらと溢れゆく 未明の夢は色だけ香る

 

2021.3.22.
ささやかな音さらさらと溢れゆく 未明の夢は色だけ香る

 

2021.3.21.
豪快な雨に笑われぬれた髪 風に蹴られて春きらめいて

 

空っぽのいちごヨーグルトの容器 いま甘い香りをふりまいて

 

2021.3.10.
あたたかな風になぜられ舞い上がる花よ 水面も鯉も私も

 

2021.3.9.
三寒の雨に二人でひとつ傘 歩けば四温に零るる香り

 

ざんざんと揺すり満ちたる春驟雨 木の芽寝起きて伸びやあくびや

 

2021.3.7.
あたたかな湯気にくるまり白妙の月もながむるひとふしの歌